「LGBTは押し付けがましい」論がもっている4つの誤解

ライター: JobRainbow編集部
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LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとった、セクシュアルマイノリティの総称)について、5ch(旧2ch)のスレッドやTwitterでこんなふうな意見を目にすることがあります。

「LGBTを受け入れるということは、告白されたら断れないってこと?」
「LGBTは『自分の気持ちを理解してほしい』ってうるさい」
「LGBTって特別扱いされてる気がする。逆差別じゃない?」
「LGBT、LGBT、ってなんかよね」

しかし、LGBTが置かれている社会制度や扱われ方を見れば、このような「LGBTは押し付けがましい」論のどこが間違っているのかがわかってきます。

そこで本コラムでは、「LGBTは押し付けがましい」論がもつ4つの誤解の解消を試みます。

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LGBTの側が「押しつけ」られている

キツネとキツネの睨み合い

「LGBTは押し付けがましい」という意見を考える際、忘れてはならないことがあります。それは、「”マジョリティ”とは異なる性的指向やジェンダーはおかしいものだ」という価値観がLGBTの人にすでに「押しつけ」られているということです。

社会学者・森山至貴さんは、『LGBTを読みとく クイア・スタディーズ入門』の中でこのように説明しています。

「東京生まれ東京育ちは気持ち悪い」と言われて「東京生まれ東京育ちで何が悪い」と言い返したら、「ほらやっぱり東京生まれ東京育ちは生まれや育ちのことばかり気にしていて気持ち悪い」とさらに言われたとします。もちろんこの時返すべき言葉は「最初に「東京生まれ東京育ちは気持ち悪い」と言ったそちらのほうがよほど気にしているのだろう、ならばそちらの主張を先に引っ込めろ」です。残念ながら同性愛者に対してもこの種の難癖はよく投げつけられるのですが、歴史を紐解けば修正されるべきは偏見に満ちたマジョリティ側の「初手」だということは明らかです。

森山至貴『LGBTを読みとく クイア・スタディーズ入門』

上の引用は同性愛者に限定されていますが、これはLGBT全般の話にもあてはめることができます。

つまり、「LGBTは気持ち悪い・おかしい」という「初手」の押しつけがあるからこそ、「LGBTはおかしくない!」とLGBT側が応じなければならないのです。本当に「押し付けがましい」のは、「LGBTは気持ち悪い・おかしい」と言う側なのではないでしょうか?

LGBTを受け入れる ≠ LGBTと付き合わなければいけない

欧米の「止まれ」信号

「LGBTから告白されて断ったら、差別だと言われるかもしれない」

このような見解をもっている人もいるようです。

しかし、これも1つ誤解しています。

たとえば、「実は好きです、付き合ってください」と女性が男性に言った場合を考えてみましょう。このときに男性側が「すみません、付き合えません」と断ったとしても、それは女性差別と言われることはありません。

同じように、たとえLGBTの人から告白されて断ったとしても、それが自動的にLGBTへの差別になるわけではありません。LGBTを受け入れつつも、LGBTからの告白を断る、ということは両立できることなのです。

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LGBTが望むのは「理解」よりもまず「認知」

固い握手を交わす二人

テレビなどで活躍する日本文学研究者のロバート・キャンベルさんは、2018年8月に「『ここにいるよ』と言えない社会」というブログの投稿でゲイだとカミングアウトしました。同投稿で、キャンベルさんはこのように語っています。

積極的に排除はしないが「触れてほしくない」が日本の常識で「美風」であるなら、改めるべき時期に来ていると私は信じます。アンケートにLGBTが「周囲にいない」と答える日本人が多いのは、存在しない、ということではなく、安心して「いるよ」と言えない社会の仕組みに原因があります。ふつうに、「ここにいる」ことが言える社会になってほしいです。

『ここにいるよ』と言えない社会

「ここにいる」と言えず、社会からいないことにされているLGBTにとって、「LGBTはどこにでもいる、周囲にもいるんだ」と認知してもらうことが全ての始まりなのです。

つまり、

「同性を好きになる感覚を理解してほしい」

「自分のからだの性とこころの性が不一致であることの感覚を理解してほしい」

というふうに「気持ちを理解してほしい」のではなく、まずは「存在していることを理解してほしい」のです(もちろん、気持ちも理解してほしいLGBTの人もいます)。

LGBTは「特別扱い」されたいわけではない

コーヒーで温まる二人

「LGBTを特別扱いするのはおかしい。逆差別だ」

このような意見を目にすることがありますが、これも誤解に基づいています。

むしろ、LGBTの人は特別扱いされたいわけではないのです。たとえば、異性カップルが(養子縁組など別の制度を使わずに)結婚できるように、同性カップルも結婚できることを望みます。また、シスジェンダーの人(こころの性と生まれた時の体・戸籍の性が一致している人)がこころの性に沿って扱われるように、トランスジェンダーの人もこころの性に沿って扱われたいと思うでしょう。

つまり、多くのLGBTは「マジョリティと違う性のあり方でも、マジョリティと同様に公正平等に扱われる」ということを望んでいるのであって、「マジョリティよりも優遇されたい」というわけではないのです。

おわりに

「LGBTは押し付けがましい」論には、次の4つの誤解がありました。

  • ・LGBTは押し付けがましい
  • ・LGBTを受け入れるということは、告白されたら断らないということ
  • ・LGBTは自分の気持ちを理解してほしい
  • ・LGBTは「特別扱い」されたい

しかし、実際は次のようになっていることを確認しました。

  • ・LGBTの側が「押しつけ」されている
  • ・LGBTを受け入れることと、告白されて断ることは両立する
  • ・LGBTが望むのは「理解」よりもまず「認知」
  • ・LGBTは「特別扱い」されたいわけではない

本コラムで「LGBTは押し付けがましい」という誤解が解けたのであれば、幸いです。

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