【Third Gender】「第3の性」って?男性でも女性でもない、世界のジェンダー事情【徹底解説!】

ライター: JobRainbow編集部
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LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとった、セクシュアルマイノリティの総称)のアイデンティティを表すための名称が増えています。そんな中で、「第3の性」という言葉を聞いたことはありますか?

この記事では「第3の性」について徹底解説していきます。

「第3の性」の2つの意味と由来

「第3の性」には、主に以下2つの定義があります。

  1. シスジェンダーの男女・トランスジェンダーの男女のどちらでもない性自認をもつ人(例:Xジェンダー)
  2. 西洋で生まれたカテゴリーでは説明できない、非西洋文化の性を主としたアイデンティティ

このうち、「第3の性」のもっとも一般的な定義は、2番目の「西洋で生まれたカテゴリーでは説明できない、非西洋文化の性を主としたアイデンティティ」です。

このように、「第3の性」は新たなカテゴリーというよりも「カテゴリーに入らなかったアイデンティティ」の総称と言えます。

ちなみに、第3の性は英語の ”Third Gender” の訳です。”第3の〜” という表現は、本当に「3つ目」というよりも、「オルタナティブ」や「新たな選択肢」という意味合いがあります。

第3の性① 男性でも女性でもない?

男性と女性を表すロゴ

「第3の性」の1つ目の定義は、「男女という2つのジェンダーに当てはまらない自認の総称」です。

たとえば、西洋社会ではGenderqueer(ジェンダークィア) や Non-binary(ノンバイナリー)などの自認がありますが、これらは「第3の性」のひとつになります。

こちらの第3の性の定義は日本語のXジェンダーと近いと言えます。Xジェンダーは日本語独自の言葉であり、直訳は難しいですが第3の性と同意義と言えます。

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1. 世界で広まる第3の性への動き

「公」を示すイラスト

西洋社会では第3の性の代わりにGenderqueer(ジェンダークィア) や Non-binary(ノンバイナリー)などと自認することが多いですが、これらのカテゴリーに対応するため、”男、女、その他” という意味であえて第3の性を公的な場面で使うことも増えています。

例えば、ドイツでは出生証明書などの公的な文書に男性、女性と並んで ”divers (その他、多様)” という選択肢を作りました。アメリカのニューヨーク州でも出生証明書の性別の欄に “X” という項目が加わり、変更することができるようになりました。オランダでも2018年にパスポートの性別に “X” が加わりました。

他方で、伝統的な第3の性の文化が根付く地域、例えばネパールでは2007年から法的に第3の性の存在が認められていました。まだまだ差別や偏見が残っていますが、人々の運動によって世界が少しずつ前に進んでいるのがわかりますね。

第3の性② 非西洋文化の性

第3の性の2つ目の意味は、現代西洋社会のカテゴリーであるLGBTに当てはめることができないアイデンティティの総称で、これが最も一般的な定義でもあります。ここではいくつかの例をご紹介します!

1. 日本の第3の性: 若衆

非西洋文化のアイデンティティとして「第3の性」が存在するとお話しましたが、現在西洋文化の影響を多く受けている日本でも、実は他人事とは言えません。

世界的に有名なカナダ・トロントのロイヤルオンタリオ博物館では “A Third Gender: Beautiful Youths in Japanese Prints (第三のジェンダー 浮世絵に見る若衆)”という展示会が2016年にあり、反響を呼びました。若衆のように、近代化前の日本の西洋のカテゴリーに当てはまらない存在も第3の性とされています。特に江戸の華やかで複雑な性文化は、国内外の注目を集めています。

男性として生まれた元服前の若者で、時に女性の装いもする若衆は若さ、エネルギーと美しさの象徴とされていました。若衆と成人男性の関係は男色と呼ばれ、江戸時代では日常の光景でした。ほとんどの場合年を重ねると若衆は成年男性の役になることから、年功序列を反映している先輩・後輩の関係と言えます。江戸時代のジェンダーは、身分や年齢などが複雑に重なりあっていたのです。

2. 世界の第3の性

日本以外にも、「第3の性」とされる文化のある地域は世界のあらゆるところに存在しています。「第3の性」とされる人々が地域的に特別な役割を担っていることも多く、そのあり方は実に様々です。たくさんの例の中から、一部を紹介していきます。

2.1 南アジア: ヒジュラ (Hijra)

地域によって呼称や定義に差がありますが、インドをはじめとする南アジアで第3の性とされている人々です。主に男性として生まれの性を与えられ、女性的な服装や髪型を取り入れる人や仕事をする人ですが、両性具有の人々や去勢手術を受けた人々なども含みます。

地域がイギリスによって植民地支配された際には、キリスト教や西洋の教えに反するとして犯罪化され、イギリス政府はヒジュラの根絶を目指しました。インドは独立後にイギリスによって作られた法律を撤廃しましたが、差別は未だに残っています。

2.2 サモア諸島: ファファフィネ (Fa’afafine)

Fa’aは ”〜のように”、Fafineは ”女性” というサモア語に由来する言葉で、男性として生まれ女性の社会的、文化的な特徴を持っている人たちを指します。恋愛対象は男性が多いですが、女性と結婚し子をもうけているケースもあります。

性転換やホルモンを投与される方も最近ではいますが、西洋のトランスジェンダーのイメージと違い身体的な変化はファファフィネになるために必要とはされていません。

2.3 ハワイ、タヒチなど: マーフー (Māhū)

マーフー (Māhū)とはポリネシアのハワイ語とタヒチ語で “間” を意味する言葉です。西洋のメディアでは「ハワイのゲイやトランスジェンダー」などと紹介されてきましたが、ハワイやタヒチの文化では、中性的もしくは両性的な特徴を持つ人を含む広い意味合いを持つ言葉となります。有名な画家ゴーギャンがタヒチを1891年に訪れた際、彼の派手な洋服を見て現地の人々は彼がマーフーだと信じたそうです。


現代では、世界的に有名なハワイのフラ師範クム・ヒナさんがマーフーとして知られており、彼女は男性として生まれ女性のフラパートを踊り、心は“間”であると考えています。また、男性のフラパートを担う女子生徒も、同様に“間”の性をもつマーフーとされています。

ネイティブ・ハワイアンでマーフーのクム・ヒナと西洋化され男女が二元化したハワイを見ることができる2014年公開のドキュメンタリー映画 「アロハの心をうたい継ぐ者/Kumu Hina」

2.4 バルカン半島: ブルネシャ (Burrnesha)

ヨーロッパのバルカン半島の国アルバニアとコソボ、モンテネグロの一部の文化で、ブルネシャは男性の社会的な役割を担う女性だと言われています。英語圏ではブルネシャは ”Sworn Virgins”、すなわち “ 誓った処女”と 呼ばれ、一生処女を貫くことを誓う儀式を経てブルネシャとなることに由来しています。

ジェンダーをテーマに活動されている写真家、ジル・ピーターズさんが撮影したブルネシャの人々の写真を、こちらから見ることが出来ます。

この他にも北アメリカのトゥー・スピリット(Two-spirit)、メキシコのムシェ(Muxe)、オマーンをはじめとするアラビア半島のハニース(Khanīth)、タイに存在する多数のジェンダーなどが第3の性と言われていて、世界中に第3の性の文化があることがわかります。

第3の性と呼ばれる人々はヘテロセクシュアルシスジェンダーと呼ばれる性的多数者からの差別、偏見のみでなく、西洋やキリスト教の価値観などによる迫害に苦しんできた歴史があります。現代の第3の性の存在は、“LGBT”が西洋で作られた1つのカテゴリー方法でしかなく、それ以上に多様な性のあり方があるということを世界に教えてくれています。

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おわりに

多様な人々

多様なジェンダーのあり方への注目が高まる中、第3の性という男女のカテゴリーや現代西洋社会の定義に当てはまらない人々への理解を高めることは非常に重要になってきています。

長くなりましたが、それでも触れられたのは第3の性という様々な定義を持つ言葉の氷山の一角にしか過ぎません。また、アイデンティティにつけられた名前は便宜上のカテゴリーで、あなたがどのカテゴリーに当てはまろうと世界で唯一の存在であることに変わりはありません。

このコラムを通じて大きな世界のアイデンティティの多様性に気づいてもらえたら嬉しく思います。

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