クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)とは?【トランスジェンダーやゲイ・レズビアンとは違う?】

ライター: JobRainbow編集部
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クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)とは、法律上の性とは異なる(とされる)装い・振る舞いをする性のあり方です。性自認(こころの性)法律上の性が一致しているかどうかは関係ありませんが、「トランスヴェスタイト」には「倒錯」というネガティブなイメージがあることから、単純に”異性装”の意味になる「クロスドレッサー」という言葉が使われるようになってきました。

「クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)」という言葉は知らなかったとしても、「女装家」という言葉はマツコ・デラックスさんなどの有名人が肩書としてテレビで使用しているので、知っている方も多いのではないかと思います。

冒頭の通り、「女装家」と「クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)」は深く結びついた言葉。そこで今回の記事では、クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)という概念についてご紹介します。

クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)とは?

クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)とは、一般的に性自認(こころの性)と身体的性(からだの性)が一致しているが、女装/男装などの異性装をする方を表します。

少し難しく言うと、振る舞い(服装、メイクの有無や髪型、口調)に関して社会から求められる「女らしさ」や「男らしさ」への抵抗感を覚えるセクシュアリティです。

「男なのに髪が長いなんて女の人みたい。女の人が髪を短くするとボーイッシュだね。」

「男がメイクをしたりスカートを履いたりするのはおかしい。女ならメイクをするのが身だしなみ。」

「女は女らしい格好をして男は男らしい恰好をするべき。」

こういった言葉を聞いた方や、場合によっては発した方も多いのではないでしょうか。

身体的(生物学的)には女性または男性であるがゆえに、女性または男性だとみなされ、それに見合った格好をするように社会から要求されることにクロスドレッサーの人々は違和感を覚えます。

性表現とは?

頭部のみのマネキン

クロスドレッサーを語るうえで、性表現について知っておくことは非常に重要です。

所属する社会に応じて表現したい性に応じた振る舞いや服装を選択することで、「見た目や言動で表す性」を指します。

【ケース①(女装家とも言われることがある)】
生まれたときの性:男性
性自認:男性
好きになる性:女性
性表現:女性

【ケース②(男装家とも言われることがある)】
生まれたときの性:女性
性自認:女性
好きになる性:女性
性表現:男性

ケース①では、好きになる性まではヘテロセクシュアルの男性と同じが、性表現は女性であり、女性として社会で振舞うことを望んでいます。人によっては「女装家」と自称することもあります。

ケース②では好きになる性まではレズビアンの女性と変わりませんが、「性表現」は男性であり、社会では男性として振舞い、そう認識されることを望んでいます。人によっては男装家と自称することもあります。

クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)はトランスジェンダー?

現在、トランスジェンダーの定義は「性自認(こころの性)と身体的性(からだの性)が一致していない方」とされています。なので、この基準からみると、クロスドレッサーは性自認と身体的性は一致していて性表現のみが違うため、トランスジェンダーとは言えません。

ですが歴史上、「トランスジェンダー」という言葉が広がる前にトランスジェンダーの方が自身のことを「トランスヴェスタイト」と自称していた時期などもあったため、過去にはトランスジェンダーに含まれるという考え方もありました。

また、「クロスドレッサーである/ない」と性自認は関係ない、という見方もあります。性自認と身体的性が一致していなくても「自分に割り当てられている社会的性とは異なる性表現を求めている」状態であれば、クロスドレッサーだ、という考え方です。

トランスヴェスタイトの人々の性自認はここで必ずしも問題ではありません。例えば、周囲から(「生物学的に女性だから」などの理由で)女性とみなされ、「女の恰好」でいることを要求される人が「男の恰好」をしたいと望む場合、この人の性自認は男性の場合も、女性の場合もどちらもありえます。

森山至貴『LGBTを読みとく−クィア・スタディーズ入門−』p.52

ただ、現在では「性自認と身体的性は一致しており、性表現のみが違う方」という定義で使われることが多いです。

クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)によくある2つの勘違い

ここで皆さんに前提として忘れないでいただきたいことがあります。

まず、クロスドレッサー=同性愛者/トランスジェンダーとは限らないということです。

例えば身体的性が男性の人が女装をしていたとしても、性自認が女性のトランスジェンダー、または同性愛者であるかは断言できません。

異性装をしている=他の性になりたい・同性愛者であるとは限らないということです。

生まれ持った性とは逆の性の恰好をして、それに合わせて女性または男性らしい振舞いをすると、その人はゲイレズビアントランスジェンダーであるとつい考えてしまいがちです。

しかしクロスドレッサーはあくまで、性表現の話であり、必ずしも同性愛者であるというわけではありませんし、女装や男装をしているからといってトランスジェンダーだと周りから決めつけることはできません。

洋服がたくさんかかったラック

もう1ついえることは、クロスドレッサーの人々が常に異性装をしているとは限らない、ということです。

クロスドレッサーの人々は必ずしも24時間365日異性装をしているわけではなく、特定の状況や空間にだけおいてすることもあるということです。

こうしてみると、性自認、ひいてはその人自身の生き方と結びつきの強いトランスジェンダーに比べて、トランスベスタイトと小難しい名前はついていますが、実際はもっと自由な自己表現の手段に近いと考えてみるといいかもしれません。

クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)の有名人

皆さんがよく知っている芸能人にもクロスドレッサーの方はいらっしゃいます。

1. マツコ・デラックス

テレビでは常に女性の恰好をしており、恋愛の対象も男性であるなどトランスジェンダーだと思われてしまいがちなマツコ・デラックスさんですが、彼は自身をゲイであると公言しています。

その一方、自身を「女装家」と評すなど、性自認は男性であるものの、「性表現」は女性であるクロスドレッサーであることがわかります。

2. ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ
引用:ソニーミュージックアーティスツ「星屑スキャッツ」

マツコ・デラックスさんとともにテレビで活躍されているミッツ・マングローブさんも、自身を「女装家」としており、クロスドレッサーであると考えられます。

なお、ネット上では「ミッツ・マングローブさんがゲイである」という情報は多いのですが、探してみると「ゲイである」と本人が言っている記事などは見当たりません。形に残っていないだけでどこかでカミングアウトしているのかもしれませんが、これはまさに「女装家=ゲイ」という前提がある証拠ではないでしょうか。

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おわりに

布で顔を覆った人

衣服や見た目は自身のアイデンティティや個性を表現するうえでもっとも直接的に関係してきます。

自分自身で自覚しているよりも、私たちは性別に応じたイメージに縛られていて、その窓を通して他者をみようとします。しかし、本来は男性だけのものや女性だけのものというような決まりはなく、私たちの個性の数だけ多種多様に存在するのではないでしょうか。

参考文献

森山至貴『LGBTを読みとく』(2017)ちくま新書

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